ワールドコン・Nippon2007レポート

三五千波氏画「アマゾニア」

8月31日、パシフィコ横浜で開催中の「第65回世界SF大会/第46回日本SF大会Nippon2007」に参加してきました。わたしの出席した「ティプトリー賞&センス・オブ・ジェンダー賞とは何か?(Introducing the Tiptree Award and the Sense of Gender Award)」では、向かって左から、柏崎玲央奈氏(司会)、大串尚代氏、ケリー・リンク(Kelly Link)氏、キャンダス・ドーシイ(Candas Jane Dorsey)氏、アイリーン・ガン(Eileen Gunn)氏、粕谷知世小林めぐみ氏、小谷真理氏、森奈津子氏、海老原豊氏、そして笙野頼子氏(残念ながら、西澤保彦氏は欠席でした)とパネリストが並び、まずはそれぞれ自己紹介、それから両賞設立の経緯が説明されました。賞の審査過程、選評を詳しく公表するのが、両賞に共通した方針であるとのこと。
その後、受賞者は受賞の感想を、審査員は審査にあたった感想を述べることになり、わたしは「『アマゾニア』はもともと、騎士道物語を愛読していたスペイン人征服者が中南米で物語そのままの世界を発見する、という話を書こうとしたもので、性差について書くという意識はなかった。しかし、男性である征服者からの視点は、わたしには書きにくく、対峙するアマゾネスの視点から書き直すことで物語がスムーズに進んだ。そうした執筆過程、またアマゾネスという素材に引っ張られて、男と女について、わたしなりに考えたことが評価していただけたのだと思う」とお話しました。
サプライズゲストの笙野頼子氏は「わたしはオカルトなどは信じない人間だが、なぜか受賞の前には必ず神社へ参拝する夢をみる。この賞のときには、小さな感じのいい祠が枕元に飛んできてくれた。受賞は非常に嬉しかった」と当時の喜びを語っていらっしゃいました。
バイリンガル企画だけあって、会場には海外からの参加者も多く見受けられました。企画の後、「スペシャリストの帽子」「マジック・フォー・ビギナーズ」と最近、たてつづけに読んだケリー・リンク氏や「遺す言葉、その他の短篇」のアイリーン・ガン氏と短編小説の書き方などについてお話しできたのが嬉しかったです。
その他の企画では、宇月原晴明氏、高野史緒氏ほかの「スチームパンク/歴史改変」と佐藤哲也氏、笙野頼子氏などの「アヴァン・ポップ」をきいてきました。楽しみにしていたこの二つの企画、なんと同時間に重なってしまってがっかりだったのですが、幸い、隣室だったので、前半は「スチームパンク/歴史改変」を、後半は「アヴァン・ポップ」とかけもちできました。それぞれ面白かったので、もっと長く聞いていたかったです。
展示ホールAのアートショーでは「クロニカ 太陽と死者の記録」の装画を担当してくださった高田美苗さんの銅版画を拝見し、カフェ・サイファティークでハカセさんにインターフェイスや人間工学のお話を聞きました。最後は日本SF作家クラブ主催の歓迎レセプションパーティーに少しだけ出席してきました。小松左京氏をはじめとする内外のSF作家の方々やアメリカ大使館の方が挨拶されるのを聞き、おお、さすがワールドコン!と思ったことでした。
今回、会場では、森下一仁先生、川又千秋先生はじめ、空想小説ワークショップで知り合った方々と久しぶりにお会いすることができました。とくに、鈴木とりこさんには会場を案内していただいたりとお世話になりました。そのほか、いろいろな方とお話しすることができ、わたしももっと頑張ろう、と高揚した気分で帰宅しました。
写真は、展示ホールAでの「センス・オブ・ジェンダー賞」紹介パネルから、三五千波氏による「アマゾニア」のイラストです。

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