三百字小説
三百字小説とは、その名のとおり、一篇三百字で書かれた小説のこと。文字数だけで数えると四百字詰め原稿用紙一枚にも満たない長さとあって、書く方にとってはアイデアの冴えを問われる、おっそろしい形態ですが、読む分には小説の醍醐味を凝縮された形で味わえる、おいしい小説です。
その極短小説を68篇も集めたこの小説集、第一部が提唱者である川又千秋氏の作品、第二部が投稿秀作選という構成になっています。どの作品も興味深いんですが、私には第二部の「奪われしもの」がとくに面白かったです。この長さに謎解きと情感の両方がこめられるんだ! と感嘆しました。
「三百字小説 (ワンショット・ノベル)」川又千秋(嶋中書店)