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「眠りの町」と「通り雨」の旅

・「ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た」沢村凜 ISBN:4041106508 ・「通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする」沢村凜 ISBN:4041106516沢村凜さんの「通り雨」と「眠りの町」については、何を語ってもネタバレになってしまうので、感想を書くのが本当に難しい。読…

レイ・ブラッドベリ

ブラッドベリ本人こそが生けるタイムマシーン、フリーリー大佐なんだ、と悟ったのが4年前の2008年、以来、永遠に生きていてくれるのではないか、と、どこかで思っていた節がありました。 彼の作品はどれも大好きですが、個人的にとくに助けられたのはエッセ…

ノベル賞とノーベル賞

あんなに暑かったのに、もう寒くなってきました。ブログを書くのは半年ぶりです。その間に第22回の日本ファンタジーノベル大賞の受賞作も決まっていました。 大賞:『前夜の航跡』 紫野貴李 優秀賞:『月のさなぎ』 石野晶 遅ればせながら、どうもおめでとう…

第21回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

・「月桃夜」遠田潤子 ISBN:4103198311 この作品で、奄美大島の歴史について初めて知りました。砂糖が通貨だったとはびっくりです。花々のねっとりした甘い香りや闇に融けこむ血や汗の匂いにくらくらさせられました。 ・「増大派に告ぐ」小田雅久仁 ISBN:410…

出アフリカと南への旅

・「日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造」篠田謙一 ISBN:414091078X 先日お会いした国立科学博物館の篠田謙一氏にご著書を頂きました。 出アフリカをはたした現生人類の足取りを、突然変異によって分岐した各DNAグループごとにたどる…

沢村凜さん新作ミステリ

・「笑うヤシュ・クック・モ」沢村凜 ISBN:4575236438 この作品を読まれる方は、とにかくまず扉のヤシュ・クック・モ像をよーくご覧になってください。マヤ文明のユニークな造形を味わう、ためばかりではありません。作中に解説がありますので多くを語ること…

第20回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

・「天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語」中村弦 ISBN:4103120819 長くなりますが、主人公の恩師にあたる人物の言葉がとても良かったので引用させてください。 「彼の建築が国家や社会に実際的な利益をもたらすことはないかもしれんが、どこかにいるひとりの…

ブラッドベリ新作

・「社交ダンスが終った夜に」レイ・ブラッドベリ ISBN:4102211063 88歳にして、これからまだまだ新作が出るというのは凄いです。わたしの好きな「たんぽぽのお酒」では<人間タイムマシーン>フリーリー大佐が少年たちに南北戦争を語っていましたが、作者本…

ワールドコン・レポート

・「世界のSFがやって来た!!―ニッポンコン・ファイル2007」日本SF作家クラブ、小松左京 ISBN:4758411158 わたしも参加したワールドコンのレポートが本にまとまりました。写真も豊富です。 ・「麦酒アンタッチャブル」山之口洋 ISBN:4396208537 山之口洋氏の…

「幻魔大戦」シリーズ新作ほか

19年ぶりにインディ・ジョーンズシリーズの新作「クリスタル・スカルの王国」が公開されましたね。「アマゾニア」で触れたアマゾン探検隊のオレリャーナに絡む話らしいので興味があります。 ・「幻魔大戦deep トルテック」平井和正 何年ぶりといえば、注文し…

「鉄塔武蔵野線」を見ました

先日、所用があって行った場所でたくさんの鉄塔を見かけたので、ソフトバンク文庫をひらいてMAPを確かめてみましたら。まさしく、「鉄塔武蔵野線」そのものを目撃していたのでした。映画版、新潮文庫版、ソフトバンク文庫版と姿を変えた「鉄塔武蔵野線」です…

アンデスの祭り

・「アンデスの祭り」すずきともこ ISBN:4884924304 すずきともこさんが新刊を出されました。アンデスのお祭りのカラー写真満載で、とくに深い峡谷に藁で綱をなって橋をかける「カナス地方の橋架け祭り」はインカ時代から続いているんだろうなあ、と思えて興…

村上春樹氏再読

・「走ることについて語るときに僕の語ること」村上春樹 ISBN:416369580X 最近、村上春樹氏の作品を再読しています。 「ノルウェイの森」では、初読のときには主人公と印象的な女性たちの関係に目を奪われて、あまり記憶に残らなかった「永沢さん」に関心を…

第19回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品

・「厭犬伝」弘也英明 ISBN:4103059516 犬が嫌いな男の話ではありません。伝説の凄腕ゲーマー、厭太郎と犬千代の話と書くと少しは近くなるのですが、舞台は現代ではなく、鎌倉時代初期を思わせる中世の異世界です。堂々のハイファンタジーですが、芸道小説で…

日本ファンタジーノベル大賞関連本

・「黄金の王 白銀の王」沢村凜 ISBN:4344013980 以前、「瞳の中の大河」路線のファンタジーを書いていますとお聞きして、うわ、それなら、きっとわたし好みの話にちがいない、と思って、ずっと楽しみに待っていましたらば。「カタブツ」を超えて、沢村さん…

森見登美彦氏、山本周五郎賞受賞

森見登美彦さんが「夜は短し歩けよ乙女」で、恩田陸氏の「中庭の出来事」と第二十回山本周五郎賞を同時受賞されましたね。どうも、おめでとうございます。最新作「新釈 走れメロス 他四篇」も面白かったです。・「まんまこと」畠中恵 ISBN:416325840X お気軽…

池田晶子氏の著作

・「人生のほんとう」池田晶子 ISBN:4901510401 ・「君自身に還れ―知と信を巡る対話」池田晶子、大峯顯 ISBN:4894163772 池田晶子氏が逝去されたのに驚き、その早すぎる死を悼みながら、上記2冊を読みました。「人生のほんとう」は西武池袋コミュニティ・カ…

最近、読んだ小説から

・「煌夜祭」多崎礼 ISBN:4125009481 第2回C★NOVELS大賞受賞作。少しずつ人間関係のつながりが読み解ける構成の妙にひかれて、一気読みしてしまいました。十八諸島輪界という設定がとても魅力的だったので、この世界で起きる別のストーリーが読みたいなと思…

日本ファンタジーノベル大賞関連3作

・「みぃつけた」畠中恵(文)、柴田ゆう(絵) ISBN:4104507067 「しゃばけ」シリーズの若だんなと鳴家との出会いが描かれたビジュアル・ストーリーブック。影絵やシャボン玉で遊ぶ鳴家たちが無類に可愛いです。 ・「飯綱颪―十六夜長屋日月抄」仁木英之 ISBN:40…

第18回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品

・「僕僕先生」仁木英之 ISBN:4103030518 春風のような可愛らしい仙人と、唐代の中国はもちろん神仙界にまで旅をすることができました。 ・「闇鏡」堀川アサコ ISBN:4103030712 平安の昔から都を守ってきた検非違使が、室町幕府の侍所に治安維持の役割を奪わ…

最近、読んだ本から

・「小説のストラテジー」佐藤亜紀 ISBN:4791762916 ・「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ ISBN:4152087196 ・「プラネテス」幸村誠 ISBN:4063287351 ・「世界遺産の町 クスコで暮らす」すずきともこ ISBN:4884924223 すずきともこさんとは、一度、お茶…

つきとうばん

・「つきとうばん」藤田雅矢(作)、梅田俊作(絵) ISBN:4774607126 第7回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞された藤田雅矢氏(id:fujitam3)の初めての絵本で、第26回JOMO童話賞佳作を受賞された作品を加筆修正されたものです。植物に造詣の深い藤田氏ら…

安徳天皇漂海記

・「安徳天皇漂海記」宇月原晴明 ISBN:4120037053 宇月原晴明氏が「安徳天皇漂海記」で、第19回山本周五郎賞を受賞されましたね。第11回日本ファンタジーノベル大賞を受賞された「信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」以来、滅びゆく者の哀しみを描かれ…

第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

年末年始のお楽しみだったファンタジーノベル大賞受賞作の出版が今年は早く、11月に刊行されました。・「金春屋ゴメス」西條奈加 ISBN:4103003111日本国内に「江戸」が独立国として存在する近未来の話です。ちゃぶ台返し(?)のお奉行ゴメスが笑えました。…

最近、印象に残った小説

・「蒲公英草紙―常野物語」恩田陸 ISBN:4087747700 この世には邪悪なものなんて存在しないのかも、と思わせてくれる村の雰囲気が素敵。お屋敷の居候さんたちが個性的で面白く、彼らのエピソードをもっと読みたいと思いました。西洋画と日本画に表れる、もの…

「SFベスト201」

最近は、いしいしんじ氏の「ポーの話」、恩田陸氏の「蒲公英草紙―常野物語」、そして「辻邦生全集〈12〉フーシェ革命暦2・3」と、読みたい本が目白押しなのですが、なかなか読めずにいます。とくに「フーシェ革命暦」は、せっかく単行本未収録だった第三…

「デイルマーク王国史」完結作

ばたばたしているうちに、桜の時期を過ぎ、若葉の季節に突入してしまいました。去年は日本ファンタジーノベル大賞つながりの沢村凛さん、斉藤直子さん、畠中恵さんとお花見をご一緒したんですが、今年の桜は近所の公園で眺めただけで終わっちゃいました。・…

粕谷栄市氏の「転落」と「鄙唄」

思いがけず、粕谷栄市氏から芸術選奨・文部科学大臣賞受賞作二作をいただいてしまいました。(文化庁の紹介ページはこちら)長篇小説で描ける異世界は一つ、多くても二つか三つがせいぜいですが、この二つの詩集には三十以上の異なる世界が広がっています。悪…

2月12日の補足

前回の読むでご紹介した「ラス・マンチャス通信」の平山瑞穂氏が、はてなで「平山瑞穂の黒いシミ通信」を開設されました。また、粕谷栄市氏が芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞されたと知りました。受賞作の詩集「鄙唄」「轉落」、読んでみようと思っています。

第16回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品

毎年、年末年始のお楽しみですが、今回はちょっと遅れて、最近、読みました。・「ラス・マンチャス通信」平山瑞穂 ISBN:4104722014 聖痕ならぬ汚痕を刻印された青年の地獄めぐり譚。とくに一篇目は電車で読んでて下車したくなったほど強烈。倉橋由美子氏の短…

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