村上春樹氏再読

・「走ることについて語るときに僕の語ること」村上春樹 ISBN:416369580X
最近、村上春樹氏の作品を再読しています。
ノルウェイの森」では、初読のときには主人公と印象的な女性たちの関係に目を奪われて、あまり記憶に残らなかった「永沢さん」に関心を持ちました。繊細で思いやり深い「僕」VS傲慢な「永沢さん」という単純な対立キャラとして読み飛ばしてしまっていたのですが、「グレート・ギャツビー」を高く評価し、就職が決まってみんなが遊び回っているさなかに一人、外国語の取得に努め、自己憐憫を最も嫌う「永沢さん」は、「僕」と同じくらいに村上氏の一側面が投影された重要なキャラクターだったようです。そういえば「グレート・ギャツビー」の主人公も、子供の頃からノートに自己鍛錬のためのスケジュールを書きつけるような人物でした。
「走ることについて語るときに僕の語ること」には、そうした自己規律を重んじて小説を書き続けてきた村上氏の姿勢が強く表されていて、読みながら居ずまいを正したくなりました。
村上氏の作品では、そのほかに「海辺のカフカ」や「ダンス・ダンス・ダンス」も好きです。

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