名著百選2014〜私が今年、出会った一冊〜

名著百選2014

名著百選に参加したのは、これで三度め。
初回は「リプレイ」二度めは「安土往還記」と、その年の新著ではないものを選びましたが、今回は、わたしにとっての古典となりそうな、今年4月刊行の作品を紹介させていただきました。
海うそ梨木香歩(岩波書店) 

十年二十年たってアルバムを見返した時、胸がしめつけられるように懐かしいのは旅行やイベントの写真よりむしろ、何でもない日常の写真のほう。時はすべてを変えてしまうから、ありふれた日々は去り、親しい人とは別れ、永遠を思わせた厳かな霊山でさえ変わっていく。
静かで真摯な気持ちにさせてくれる小説です。

明治の廃仏毀釈がモチーフの一つなのですが、色即是空諸行無常といった仏教思想が単なる解説としてではなく、ストーリーそのものに溶け込んでいて、読み終わった後、自分がどこにいるのか一瞬、分からなくなりました。毎日の心配ごとのあれこれがすっぽり抜け落ちて真っ白になり、永遠のなかに連れ出されたようでした。
これを機に、とりこぼしていた作品を続けて何作か読んだのですが、そのうちの一つ、9月刊行の「丹生都比売 梨木香歩作品集」(新潮社)は担当の編集さんが手がけた本だったそうで、ご縁が嬉しくなりました。

名著百選2014〜私が今年、出会った一冊〜(ブックファースト新宿店)
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