愛・地球博

愛知万博が始まりましたね。会場は子供のころによく遊んだ愛知青少年公園、リニモの駅は実家の目の前というわけで、この万博にはちょっと思い入れがあるんです。

大阪の万博公園近くに住んでいた学生時代、地元の人から「無秩序に増えた駐車場や食べ物屋が、万博終わったとたんにばたばた潰れて、土地柄が荒れて大変だったのよ」と聞いたことがあります。愛知万博の会場が決まったときには、山と田圃の緑に恵まれた郷里がそんなふうに変わってしまったら嫌だなーと心配していましたが、今回は交通制限もあって、そんなことにはならないみたいでよかったです。

子供のころ、リニアモーターカーとロボットといえば、まさしく未来技術の象徴でした。かつての青少年公園にも、ロボット館という施設があって、今から思えば、あれは人工知能で動くロボットではなくて、単なる機械じかけのからくり人形だったんですが、子供にはじゅうぶん不思議な魔法の館でした。その同じ場所で、本物のロボットが行き交うようになるとは。やっぱり、今は未来なんですね。当たり前か。そのころ感じた不思議さを、いつか小説に表せたらいいなと思っています。

粕谷栄市氏の「転落」と「鄙唄」

思いがけず、粕谷栄市氏から芸術選奨文部科学大臣賞受賞作二作をいただいてしまいました。(文化庁の紹介ページはこちら)

長篇小説で描ける異世界は一つ、多くても二つか三つがせいぜいですが、この二つの詩集には三十以上の異なる世界が広がっています。悪夢から覚めたらそこもまた悪夢だった、どこまでもどこまでも悪夢という果てしなさは詩集ならではのもの。感覚異常が起きるタイプのドラッグって、もしかしたら、こんなかんじなのかな。

粕谷氏の散文詩のなかで直接的に描かれているイメージは、孤独だったり、不条理に残酷だったりするのですが、影が色濃い分、その影の裏側にある強烈な光について想像をかきたてられるところが好きです。「転落」がどこにも存在しない場所で起きる悪夢だとすれば「鄙歌」はかつての日本で起きていた悪夢。とくに、のの字に萌えるぜんまいのなかに寝そべる恋人たちの詩は、悪夢のなかにも浄福感があって素敵でした。

・「転落」粕谷栄市 ISBN:4783719551
・「鄙唄」粕谷栄市 ISBN:4879956201

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